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布引渓谷の水「六甲のおいしい水」が世界の名水と称される理由。布引渓流へのアクセス仕方も。

神戸の地元の人々から愛され、今や全国的に知られる「六甲のおいしい水」。
六甲山系の天然水は、六甲山の花崗岩層を通じて自然にろ過され、適度なミネラルを含む軟水です。
日本の名水百選にも選ばれています。

かつて、神戸の水道水は布引貯水池から供給されており、外国船の船員たちから「世界一の名水」と称賛されました。

この記事では、「六甲のおいしい水」がなぜこれほど評価されるのか、その理由や背景についてご紹介します。

なぜ「六甲のおいしい水」は世界の名水と称されるのか?

「六甲のおいしい水」は、現在では「アサヒ おいしい水 天然水 六甲」としてリニューアルされています。
この水は神戸市灘区にある井戸から汲み上げられ、六甲山系の天然水を源としています。
同じく名高いのが「神戸ウォーター 六甲布引(ぬのびき)の水」であり、こちらも「名水百選」に選ばれた布引の水を泉源としています。

日本名水百選とは?

日本名水百選は、1985年に環境庁が市町村から推薦された784か所の中から選んだ100の優れた水源です。
湧き水、地下水、川の表流水を対象に、学識経験者による検討会が選定しました。
この選定は、水質や水量、周辺環境の状態が良好であり、地元の人々に大切に守られていることを条件としています。
選ばれた名水は、国民に広く紹介され、水に対する認識を高めることを目的としています。

1985年には、布引渓流の水は環境省の日本名水百選に選ばれています。

赤道を越えても腐らず美味しさを保つ「コウベウォーター」

1868年、神戸港が国際貿易の拠点として開かれました。
船舶にとって重要なのは水の補給であり、神戸市水道局は1905年から船舶への給水を開始しました。
その水源は布引渓流で、この水は「赤道を越えても腐らない」と評されました。
作家の司馬遼太郎は『街道をゆく』の中で、昔の外国の船乗りたちが、赤道を越えても腐らず美味しさを保つ「コウベウォーター」として布引渓谷の水を絶賛し、世界一の名水と称えたと述べています。

長い航海に出る船乗りたちにとってこの水は命の水であり、その評判は船から船へと広がり、布引渓谷の水をたっぷり積み込んで出航する船が多かったといいます。

布引渓谷の水の秘密

布引渓谷の水にはどのような秘密があるのでしょうか。
六甲山布引水系の地質は花崗岩砂礫層やシルト層で構成されており、天然のろ過機能を持ち、汚染の心配もない地質です。
自然にろ過されたこの水は、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを適度に含んだ軟水(なんすい)で、これが美味しい水の理由とされています。

水の腐敗は有機物の含有量が多いと進みやすいですが、布引渓流は急峻な地形を持ち、有機物が少ないのが特徴です。
常温保存で5年間も品質が保たれるとも言われています。

自然豊かな六甲山系にしみ込み、長い時間をかけて湧き出る布引渓谷の水は、昔も今も変わらず、清流として流れ、布引の滝となって美しく、その美味しさを保っています。

©KOBE TOURISM BUREAU

名水百選 布引渓流(ぬのびきけいりゅう)

布引渓流(ぬのびきけいりゅう)

六甲山を水源とし、神戸市の中心部を流れる生田川の一部を構成する布引渓流には、布引の滝や布引貯水池などの重要な水源があります。
布引貯水池の水は清らかで、多様な水生生物が生息しています。
また、一日に数千から数万トンの水量がありますが、直接湧き水を汲む場所はありません。

布引の滝は雄滝、夫婦滝、鼓滝、雌滝から成り、その美しさで知られています。
これらの滝は古くから和歌に詠まれ、竜宮城や龍神に関する伝説も残されています。
平安時代から景勝地として多くの人々が訪れ、その様子は文献にも描かれています。

布引貯水池は、生田川の上流を堰き止めて明治33年に建設され、船乗りたちの間では「腐らないおいしい水」として評判でした。

布引貯水池の水質を保つため、上流には「分水堰堤」「放水路トンネル」「締切堰堤」という仕組みが導入されました。
このシステムは、きれいな水を貯水池に、濁水を迂回させるもので、当時の画期的な技術でした。
同時に、六甲山での植林も進められ、現在でも清澄な水質が保たれています。

布引の滝とその周辺の美しい自然環境は、一年を通じて訪れる価値があります。
また、滝から市ヶ原周辺は市民のリクリエーションスポットとして親しまれています。

アクセス
住所 兵庫県神戸市中央区葺合町
【 鉄道・バスでお越しの場合 】
JR東海道本線「三宮駅」下車⇒市営地下鉄「新神戸駅」下車⇒徒歩10分「布引の滝」→ 徒歩20分「布引貯水池」→ 徒歩15分「市ヶ原」

お問い合わせ
神戸市環境局環境保全指導課水環境保全係
〒 650-8570
兵庫県神戸市中央区加納町6丁目5-1
TEL : 078-322-5309

神戸の水道水の変遷

海と山に囲まれた神戸には水源となる大きな川や湖がないため、明治以降、布引、烏原(からすはら)、千苅(せんがり)の3カ所の貯水池が建設され、川の水や雨水を貯めてきました。
この中で名水と呼ばれたのが布引貯水池の水です。

味が落ちた?

実は、神戸の水道水もかつては生田川水系の布引谷川を水源とする布引貯水池(ダムの名は五本末堰堤(ごほんまつえんてい)、通称「布引ダム」)の水を利用していました。
このダムは1900年(明治33年)に完成し、日本初の重力式コンクリートダムとして現在も神戸の水源となっています。
布引ダムの水を使った水道水は、布引ダムが完成した1900年から1940年代前半にかけて神戸港に立ち寄る外国船の船員たちから「コウべウォーターは世界一の名水」と評判になっていました。

しかし、太平洋戦争後、「味が落ちた」と言われるようになりました。

大きな変革と拡張

神戸市の急速な発展に伴い、神戸市の水道事業も大きな変革を遂げました。
まず、新たに2つの浄水場と烏原(からすはら)ダム(1905年(明治38年)完成)が建設されました。
大正時代には、港がさらに賑わい、産業と経済が急速に発展しました。
同時に市域も拡大し、給水人口も大幅に増加しました。
1917年(大正6年)には奥平野浄水場に急速ろ過施設が追加され、浄水能力が向上しました。
さらに2年後の1919年(大正8年)には千刈(せんがり)ダム(千刈堰堤(せんがりえんてい))と上ヶ原浄水場が完成しましたが、急激な人口増加により水不足は解消されず、市民の不満が続きました。

新たな水源の確保

神戸市水道局の新しい浄水施設の建設計画は、自然環境保護や市域の拡大の影響で断念されました。
そのため、同じく水源不足に悩む芦屋市や西宮市と協力し、阪神上水道市町村組合を設立しました。
琵琶湖・淀川水系の豊富な水量を水源とすることで、安定した水供給が実現しました。

布引渓流の水は家庭の蛇口から出ますか

1942年(昭和17年)から布引の水が琵琶湖・淀川水系の水と混合されるようになりました。

布引渓流(布引貯水池)の水は兵庫区の奥平野浄水場で処理された後、琵琶湖や淀川の水と混ぜられて各家庭に供給されます。
そのため、布引渓流の水だけが直接家庭の蛇口から出ることはありません。

現在、神戸市が保有する水源は1日の必要水量の約20%に過ぎず、残りの約80%は琵琶湖・淀川水系の阪神水道企業団や、吞吐(どんど)ダム・青野ダムなどを水源とする兵庫県水道用水供給事業から購入しています。
そのため、六甲の天然水や神戸ウォーターの味を知る人々が「琵琶湖や淀川の塩素殺菌された水は美味しくない」と感じるのも無理はないのです。

まとめ

六甲のおいしい水は、六甲山の天然の環境でろ過された質の高い水であり、その歴史的背景も相まって高く評価されています。
神戸の水道水がかつての名声を失った一方で、この六甲の水は今なおその美味しさと品質で多くの人々に愛されています。
自然の恵みを感じる六甲のおいしい水、ぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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