「仕事でとちった」
「セリフをとちる」
という言い方を聞いて、
「とちるってどういう意味?」
「何が語源なの?」
「関西の方言?」
と気になったことはありませんか?
結論からいうと、「とちる」は、もともと浄瑠璃や歌舞伎などの舞台で使われた言葉で、現在は「失敗する」「やりそこなう」という意味でも使われます。
また、「とちる」は関西だけで使われる方言ではありません。
語源については、「慌てふためく」という意味の古い言葉「とちめく」に由来するという説があります。
まず簡単にまとめると、
- とちる=失敗する・やりそこなう
- もともとは舞台でセリフやしぐさを間違える意味
- 浄瑠璃や歌舞伎の世界で使われていた
- 関西だけの方言ではない
- 語源は古語「とちめく」とする説がある
- 「土地る」が語源という根拠は確認できない
- 一般的には「とちる」「トチる」と書く
という言葉です。
ここから、語源や歴史、使い方をもう少し詳しく見ていきましょう。
「とちる」とはどんな意味?
「とちる」には、大きく分けて次のような意味があります。
舞台でセリフや動作を間違える
もともとの代表的な使い方です。
たとえば、
「本番で長いセリフをとちってしまった」
なら、
本番でセリフを間違えた
という意味になります。
セリフだけでなく、舞台へ出るタイミングや演技の動きなどを間違えた場合にも使われます。
慌てる・まごまごする
「とちる」には、慌ててうろたえたり、まごまごしたりする意味もあります。
現在の日常会話ではあまり意識されない意味ですが、「失敗する」という意味につながる重要なポイントです。
物事をやりそこなう・失敗する
現在では舞台以外でも、
「プレゼンでとちった」
「大事なところでとちった」
のように使われることがあります。
この場合は、
「失敗した」「しくじった」「ミスをした」
という意味です。
「とちる」の語源は「とちめく」という説がある
「とちる」の語源として有力な説のひとつが、古い言葉の
「とちめく」
です。
「とちめく」は、現在ではほとんど使われませんが、
- 慌てふためく
- うろたえる
- 狼狽する
という意味を持つ言葉です。
室町時代の資料にも見られる古い言葉で、歌舞伎の用語について説明した資料でも、「とちる」は近世初期の上方語「とちめく」に由来するという説が紹介されています。
つまり、
慌てる・うろたえる
↓
舞台で慌ててセリフや動作を間違える
↓
「とちる」
↓
一般的な「失敗する」という意味にも広がる
という流れで考えるとわかりやすいでしょう。
ただし、語源には複数の説があるため、「これが唯一の語源」と断定するのは避けた方が適切です。
「土地る」が「とちる」の語源ではない
「とちる」の漢字や語源を調べていると、
「土地る」
「土地に足を取られることから生まれた」
という説明を見かけることがあります。
しかし、主要な国語辞典や歌舞伎用語の説明では、「土地る」を語源とする説明は確認できません。
そのため、
「土地に足を取られる」
↓
「転ぶ」
↓
「失敗する」
↓
「とちる」
という説明を語源として断定するのは避けた方がよいでしょう。
「とちる」は一般的には、ひらがなの
とちる
または、くだけた表記として
トチる
と書きます。
「栃」が語源なの?
「土地る」ではありませんが、「栃」という字が語源説に登場することはあります。
関係する言葉が、
栃麺棒(とちめんぼう)
です。
栃麺棒は、栃の実などを使った栃麺を打ち延ばすための棒を指します。
一方で、「栃麺棒」には「慌てること」「慌て者」という意味もあります。
辞書では、この意味について、
- 「とちめく坊」が変化したという説
- 栃麺作りに素早さが必要だったことから生まれたという説
などが紹介されています。
つまり、
栃麺棒 → とちめく → とちる
という説明を見かけることはありますが、語源関係はそれほど単純ではありません。
「とちるの語源は絶対に栃の実」と断定するより、
「とちめくとの関係が指摘されており、その周辺には栃麺棒に関する語源説もある」
くらいに理解しておくのがよいでしょう。
「とちる」は方言?関西弁なの?
「とちる 方言」と検索する人も多いですが、結論としては、
「とちる」は関西だけの方言ではありません。
国語辞典にも一般の言葉として掲載されています。
もともと浄瑠璃や歌舞伎などの舞台の世界で使われ、そこから他の分野にも広がった言葉です。
語源説に「上方語の『とちめく』」が出てくるため、
「関西弁なのでは?」
と思われやすいのかもしれません。
しかし、
語源に上方の言葉が関係している可能性があることと、現在の「とちる」が関西弁であることは別の話です。
現在では「失敗する」「しくじる」という意味で、地域に限定せず使われます。
地域によって使用頻度が違う可能性はある
言葉なので、地域や世代によって、
「よく使う」
「意味はわかるけれど自分では使わない」
「ほとんど聞いたことがない」
という違いはあります。
しかし、それだけで「○○地方だけの方言」と判断することはできません。
「とちる」は、少なくとも辞書上は特定地域だけの方言として扱われている言葉ではありません。
「とちる」はもともと歌舞伎や浄瑠璃の言葉
「とちる」の歴史で重要なのが、舞台との関係です。
辞書では、「とちる」は浄瑠璃や歌舞伎の世界で使われていた言葉とされています。
舞台上で、
- セリフを忘れる
- セリフを言い間違える
- 演技を間違える
- 出るタイミングを間違える
などの失敗をすることを「とちる」と言いました。
江戸時代の資料にも使用例が残っています。
その後、意味が舞台だけに限られなくなり、
「仕事でとちる」
「プレゼンでとちる」
のように、一般的な失敗にも使われるようになりました。
「とちった」とはどういう意味?
「とちる」の過去形が、
「とちった」
です。
意味は、
「失敗した」「しくじった」「間違えた」
と考えればわかりやすいでしょう。
たとえば、
「本番でセリフをとちった」
なら、
「本番でセリフを間違えた」
という意味です。
「今日のプレゼン、とちったなあ」
なら、
「今日のプレゼンで失敗した」
という意味になります。
くだけた話し言葉なので、友人同士や職場での会話などでは使えますが、正式な報告書などでは「ミスをした」「誤りがあった」などに言い換えた方が自然です。
「とちる」の使い方と例文
実際にはどのように使うのか、場面別に見てみましょう。
舞台・演劇
「大事なセリフをとちってしまった」
意味:
大事なセリフを間違えた。
プレゼン
「緊張して最初の説明をとちった」
意味:
緊張して最初の説明を失敗した。
仕事
「入力作業でとちって、数字を間違えた」
意味:
入力作業でミスをした。
人前で話す場面
「自己紹介で名前をとちりそうになった」
意味:
自己紹介で言い間違えそうになった。
このように、現在では舞台以外にも使えます。
ただし、「とちる」にはややくだけた響きがあるため、相手や場面を選んで使いましょう。
「とちる」と「しくじる」の違い
「とちる」と似た言葉に「しくじる」があります。
どちらも「失敗する」という意味で使えますが、少しニュアンスが違います。
| 言葉 | 主なニュアンス |
|---|---|
| とちる | セリフ・動作・段取りなどを間違える。失敗する |
| しくじる | 物事をやり損なう。失敗する |
| ミスする | 間違いをする。幅広く使える |
| やらかす | 大きめの失敗をしたときに使われるくだけた表現 |
「とちる」は舞台用語がもとになっているため、
「本番で言葉や動作を間違える」
ような場面と特に相性がよい言葉です。
一方、「しくじる」はもっと広く、物事そのものを失敗した場合にも使えます。
「とちる」と「早とちり」は同じ意味?
「とちる」と「早とちり」は似ていますが、意味は同じではありません。
とちる
失敗する、やりそこなう、間違える。
例:
「発表でセリフをとちった」
早とちり
よく確認する前に「わかった」と思い込み、間違えること。
例:
「明日が締切だと早とちりしていた」
つまり、
とちる=失敗全般に使える
早とちり=早合点したことによる間違い
という違いです。
早とちりには、
「十分に確認しないまま判断してしまった」
という原因まで含まれています。
「とちった」と「早とちりした」は、似ていても使い分けが必要です。
「とちる」に漢字はある?
普段使う場合は、
「とちる」
とひらがなで書くのがわかりやすいでしょう。
「トチる」とカタカナを交ぜて書くこともあります。
語源説との関係から「栃」という字を連想する場合もありますが、一般的な文章で「栃る」と書く必要はありません。
辞書でも見出しは「とちる」とされています。
そのため、
「仕事でとちった」
「セリフをとちる」
のように、ひらがなで書けば問題ありません。
「とちり」とは?
「とちる」を名詞として表した言葉が、
「とちり」
です。
意味は、
- しくじり
- 失敗
- へま
などです。
たとえば、
「今日の舞台では大きなとちりがなかった」
なら、
「大きな失敗がなかった」
という意味になります。
舞台の世界では現在でも「とちり」という形を見かけることがあります。
「とちる」は死語なの?
「とちる」は現代の国語辞典にも掲載されており、意味がなくなった言葉ではありません。
一方で、
「ミスする」
「しくじる」
「やらかす」
など、似た表現が多いため、人によっては普段ほとんど使わないこともあります。
特に舞台・演劇などでは意味が通じやすい一方、日常会話でどの程度使うかは世代や環境によって違います。
そのため、
「完全な死語」でも「誰もが日常的に使う言葉」でもない
と考えるのが自然でしょう。
「とちる」のように、普段何気なく使っている言葉の由来をもっと知りたくなった方には、日本語の語源をまとめた辞典もあります。身近な言葉の意外な由来を調べるのが好きな方なら、読み物としても楽しめます。
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「とちる」についてよくある質問
「とちる」の意味を一言でいうと?
「失敗する」「しくじる」という意味です。
もともとは舞台でセリフやしぐさなどを間違える意味で使われました。
「とちる」は関西弁?
関西だけの方言ではありません。
語源については上方語の「とちめく」と関連する説がありますが、「とちる」自体は国語辞典にも一般語として掲載されています。
「とちる」はどこの方言?
特定の地域だけに限定された方言として考える必要はありません。
もともとは浄瑠璃や歌舞伎などの舞台で使われ、一般にも広がった言葉です。
「とちる」の語源は「土地る」?
「土地る」が語源という根拠は、主要な辞書では確認できません。
古い言葉「とちめく」との関係が語源説として紹介されています。
「とちる」は漢字でどう書く?
一般的には「とちる」とひらがなで書きます。
くだけた表記では「トチる」も見られます。
「とちった」とは?
「とちる」の過去形で、「失敗した」「間違えた」という意味です。
「とちる」と「早とちり」は違う?
違います。
「とちる」は失敗すること、「早とちり」は十分確認せず早合点して間違えることです。
まとめ|「とちる」は舞台から広がった「失敗する」という言葉
「とちる」についてまとめると、
- 「とちる」は失敗する・やりそこなうという意味
- もともとは舞台でセリフやしぐさを間違える意味で使われた
- 浄瑠璃や歌舞伎の世界から他の分野へ広がった
- 語源は古語「とちめく」とする説がある
- 「とちめく」は慌てふためく・うろたえるという意味
- 「土地る」が語源という根拠は確認できない
- 関西だけの方言ではない
- 一般的には「とちる」「トチる」と書く
- 「とちった」は「失敗した」という意味
- 「早とちり」は早合点による間違いなので意味が異なる
ということです。
検索すると「関西弁」「土地る」「栃の実」などさまざまな説明が出てきますが、まず押さえておきたいのは、
「舞台での失敗を表した言葉が、一般の『失敗する』という意味にも広がった」
という点です。
「昨日のプレゼンでとちった」と言われたら、
「昨日のプレゼンで失敗したんだな」
と理解すればよいでしょう。